安全に出産を迎えるために、今できること。マイナス1歳からの“感染”予防-後編-

 大切な赤ちゃんと生活する妊婦さんが、感染の不安を最小限に、健康に出産を迎えるにはどんな工夫ができるのでしょうか。
前編に引き続き、ウイルスからの感染予防法や、最新の研究から分かってきた「唾液とうつ病」の関連もお伝えします。
お話を伺ったのは、神奈川歯科大学大学院 歯学研究科口腔科学講座環境病理学 教授・槻木恵一先生です。

前編はこちら

唾液にはサラサラとネバネバの2種類がある

 唾液には、サラサラした唾液とネバネバした唾液と2つあるんですよね。通常はだいたい同時に出てきて、混ざって口の中で作用してくれています。耳の前にある耳下腺という唾液腺からは、漿液性のサラサラ唾液が出てきます。耳の前をくるくると軽く押すと、サラサラ唾液がシューッと出てきます。

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耳下腺の位置 
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耳下腺マッサージ
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顎下腺マッサージ

顎の下にある顎下腺は混合腺といわれる唾液腺で、サラサラ唾液とネバネバ唾液が両方出てきます。顎の後ろを、グーにした関節の先のところで、軽く後ろから前に押すと、舌の下のから唾液が出てくるんですよね。
IgAは、顎下腺からの方がよく出るのが分かっています。

サラサラ唾液はリラックスしてる時出てくる唾液で、口の中を潤します。ネバネバ唾液は、緊張したり交感神経が活発になると出てくる唾液で、ムチンやIgAといったタンパク成分が多く出てきます。サラサラ唾液とネバネバ唾液がうまく混ざりって、口の中にスーッと浸透してくれるのが一番いい状態なんです。この調節は自律神経が関わっているので、自分ではコントロールできません。

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産前・産後うつと「唾液」の関係は?

――唾液の量や質の調節は、自律神経がコントロールしているのですね。たとえば、産前・産後うつと唾液の間にも、なにか関係があるのでしょうか?

うつ病はいろいろな物質や生活要因などが関与しているので、なかなか単一因子で語れないのですが、比較的有力な物質として、脳由来神経因子BDNFが挙げられます。うつ病のときは、脳の海馬でBDNFの濃度が下がると言われています。私たちの研究室では、BDNFが唾液腺からも産生されるのを発見しました。さらに興味深いことに、ストレスをかけると唾液腺にBDNFが出てきて、ストレスを解放すると唾液中のBDNFが減るのが分かったのです。

――ストレスがかかると、脳のBDNF濃度は下がるけれど、唾液中の濃度は上がっていく。

そうです。ストレスによって脳内のBDNF濃度が下がっても、唾液中から供給されれば、脳内のBDNF濃度が維持できて、ストレスに強くなるのではないかと仮説を立てました。実際に、唾液中のBDNFの移行経路を調べてみると、舌下部から血液中に再吸収されて、脳に移行することが分かりました。脳に移行したBDNFは、海馬でGABAを多く産生します。GABAが産生されるとストレスに強くなるので、抗不安作用を発揮する。
うつ病などに対して、唾液中のBDNFを増やすことが、何らかのポジティブな役割を果たしている可能性が分かってきたのです。

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唾液の量と質に良いことは、ストレス耐性をつけてくれる。つまり、普段の食事で腸に良い食べ物をよく噛んで食べ、軽い運動をする習慣が、ストレスに強い脳をつくると言えます

妊婦さんが、元気に出産を迎えるためにできること

――出産を控える妊婦さんが、感染予防に対して特に心がけた方がいいことはありますか?

ひとつは、新型コロナウイルスの感染は鼻と口が入り口になっていること。これはもう間違いないです。例えばインフルエンザだと、喉から感染します。
一方新型コロナウイルスは、明らかに舌や歯肉溝、歯周ポケットなどの口腔粘膜上皮に感染するんです。なので、口や鼻を覆うようにマスクをして、防御していただくのが大事です。布やウレタンではなく、サージカルマスクが第一選択になります。まず、外敵の侵入経路を遮断するのが大切です。

もうひとつは、ある程度のウイルス量がないと感染しないという事実です。気をつけたいのは、ご主人やお子さんからの感染です。日中集団生活をしている、2歳くらいのお子さんからうつるケースが非常に多くなっています。少し咳が出る、微熱程度の普通の風邪だと思って調べると、新型コロナウイルスに感染しているというケースは多いです。

最後に忘れてはいけないのが、抵抗力・免疫機能を高めるということです。免疫機能を高めるのは、なかなか一朝一夕に行かないかもしれませんが、日々の食事と睡眠、軽い運動が重要ではないでしょうか。口や鼻の外を守り、危険因子をよく知っておく、そして自分の免疫機能を高める。この3本柱だと思います。
特に妊娠出産を迎える方々は、悩みも多く気持ちが不安定になりやすいと思います。なかなか直接は会えないかもしれませんが、リモートでも、お友達や仲間と話す時間をつくってほしいと思います。自分一人で頑張ると滅入ってしまいますから。誰かと話すのは、ストレス解消になります。

――外側と内側からの感染予防と、食事・睡眠・ストレスをうまく発散するのが大事なのですね。最後に、奥さまが妊娠中に気をつけていたことや、先生がアドバイスされたことがありましたら教えて下さい。

妻は歯科衛生士なので、いろいろな本を読みながら自分で気をつけていました。正直いうと、アドバイスをするようなことはほぼなかったです。しいていうなら、忙しがらないで、お互いによく話をするようにはしていたかな。不安感を受け止めようと、意識していた気がします。

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――槻木先生、この度はどうもありがとうございました。

最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。過去の記事はこちらからお読みいただけます。ママーレ・コーレでは今後も、出産レポートの他に、出産前〜出産後にも役に立つ記事を定期的に発信していきます。

キシリトールで始める マイナス1歳からのむし歯予防 

出産するとむし歯は増える?歯周病があっても出産できる?マイナス1歳からのむし歯予防」

槻木恵一教授の紹介

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1967年12月東京生まれ。歯科医師。
2007年4月より神奈川歯科大学教授。専門は環境病理学、唾液腺健康医学、災害歯科医学、近代歯科医学史。口腔ケアの重要性と唾液の働きを「唾液力」と命名し、テレビだけではなく、各種女性誌でのわかりやすい解説が好評。
著書に「ずっと健康でいたいなら唾液力を鍛えなさい」「唾液サラネバ健康法」など。

執筆・編集:芹田枝里
二児(小学生兄妹)の母。神奈川県在住の歯科医師。

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