出産するとむし歯は増える?歯周病があっても出産できる?マイナス1歳からのむし歯予防

こんにちは。ママーレ・コーレのライター、せりです。
ママーレ・コーレでは、出産レポートの他に、出産前〜出産後にも役に立つ記事を定期的に発信していきます。

 
 今回のテーマは、「出産するとむし歯は増える?歯周病があっても出産できる?マイナス1歳からのむし歯予防」です。
出産を控えた妊婦さんから、歯科医院で聞かれることの多い質問を6つ取り上げ、分かりやすくお伝えしていきます。

Q1.妊娠中はむし歯になりやすいってホント?

A1.本当です。特に妊娠中は、つわりの症状も関係します。

 むし歯のなりやすさは、

  • 歯の質などの遺伝的要因
  • 食事(特に砂糖)
  • 親から伝播したむし歯菌(ミュータンス菌)の数
  • 唾液の量や質

が関係します。

 妊娠中はこの他に、つわりが関係するケースが多いです。症状は個人差がありますが、以下のような場合は、お口の中がむし歯になりやすい環境になるので、注意が必要です。

  • 食事や飲み物が摂れない→身体が水分不足になり唾液が減ってしまう。
  • 口にものを入れると気持ちが悪くなる→歯が磨けない。
  • 食べづわり→歯がむし歯になりやすい状態にさらされ続ける。
  • 嘔吐→酸蝕(歯が溶けること)でむし歯になりやすくなる。

など、食生活の変化も関係します。

食後すぐに歯を磨けないときは、しっかりうがいをし、体調の良いときに歯磨きができるといいと思います。

Q2.歯を磨けなかったとき、洗口液でうがいをするだけでもいいですか?

A2.洗口液は、歯ブラシの補助ツールです。使用後、体調の良いときを見計らって歯を磨いてください。

 洗口液には、製品ごとに殺菌成分が配合されており、お口の中に浮遊する細菌数を減らす役割があります。しかし、歯にしっかりついたプラーク(細菌の塊)は、洗口液だけでは取れません。
また、アルコールが入っている洗口液は、お口の中の水分を揮発させるので唾液が少なくなってしまいます。使いすぎは、むし歯になりやすい口腔内環境を作ってしまうこともあります。
気分をスッキリさせたいときや、お出かけ中に歯を磨けないとき、歯磨き後など限定して使えるといいのではないでしょうか。

Q3.出産後はむし歯になりやすいのでしょうか?

A3.なりやすいです。


 出産後のむし歯のなりやすさは、

  • ストレスで甘いものが食べたくなる。
  • 赤ちゃん中心の生活になるため、お母さん自身の食生活が乱れがちになる。
  • 赤ちゃんのお世話が忙しく、歯を磨く時間が取れない。
  • 授乳中は体中が水分不足(※)になり、唾液の量も少なくなくなる。

などの要因が考えられます。
むし歯のメカニズムや予防法は、前回の記事が分かりやすいと思います。ぜひ併せてご覧いただけたら嬉しいです。

(※)母乳は血液から作られます。血液の90%は水分なので、授乳中は脱水になりやすいのです。唾液も母乳と同様、血液から作られています。詳しくは別のテーマで取り上げます。

Q4.出産すると、突然歯が抜けることがあると聞きました。本当ですか?

A4.ケースバイケースですが、本当です。

 この質問には、歯周病が関係しています。「突然歯が抜ける」場合は、もともと重度の歯周病がある方に限られますが、出産後は歯周病が悪化しやすいと言えます。なぜでしょうか?

妊娠中は、胎盤の毛細血管から女性ホルモンが分泌されます。
毛細血管は、歯と歯茎の間の溝(歯肉溝・しにくこう)にもあり、妊娠中は、歯肉溝からも女性ホルモンが分泌されています。
妊娠中の歯肉溝には、女性ホルモンを餌にする歯周病菌が増えるので、歯周病になりやすい時期なのです。

そのまま出産を終え、産後。赤ちゃんのお世話が忙しく、歯を磨いているつもりが歯ブラシをくわえているだけになりがちです。前述のように、授乳中は脱水になりやすく、唾液が少なくなることもあります。

  • お母さんが一人の時間をもち、ストレスを解消できるように、パートナーやご家族に協力を仰ぐ。
  • かかりつけの歯医者さんで定期検診を受ける。

のが、産後の歯周病予防には大切です。

Q5.歯周病ってどんな病気?予防法は?

A5.「キーストーン病原体仮説」が、現状の有力な歯周病のメカニズムです。

 歯周病は、歯周病原性菌だけが引き起こすのではなく、菌を身体から排除しようとするヒトの免疫反応が関係していることが分かってきました。

お口の中には、数百種類の細菌がすんでいます。これを常在菌と言います。
歯周病を引き起こす細菌は、何らかの理由で、だいたい18歳までに誰もが感染すると言われています。

特に高い病原性を持っている特定の歯周病原性細菌は、少量いるだけで身体の免疫システムを妨害し、お口の中の常在菌のバランスを変えてしまうのです。
こうして引き起こされる炎症のメカニズムが「キーストーン病原体仮説」です。
炎症を引き起こす少量の歯周病原性細菌を、キーストーン病原体ともいいます。

多くの細菌は、たくさん存在することで炎症を引き起こしますが、キーストーン病原体(高い病原性を持った少数の歯周病原性細菌)は違います。
歯の磨き残しに潜んでいる細菌の塊(プラーク)の量が増えても、キーストーン病原体の量は少ないままなのが特徴です。

 病原性細菌の数が少なくても、引き起こされてしまう歯周病。どのように予防したらいいでしょうか。
歯周病が重度かどうかは、

  • 病原性細菌が潜みやすいかどうか(歯列不正、口呼吸、お口の清掃不良)
  • 宿主要因(遺伝、ストレス、年齢、全身疾患、肥満・糖尿病などの生活習慣病)
  • 生活習慣要因(生活習慣、喫煙、飲酒)

歯車のように絡み合っている3要因で判断できます。これらを、歯医者さんでの問診や検査を通じて把握するのが第一歩です。

歯周病にならないように歯を磨く!のも大事ですが、それ以上に、大切なご自身の身体の情報を知り、歯周病が悪化するリスクを減らす行動を増やすのが大切です。
もともと歯周病が悪化しやすい体質の方もいらっしゃいますので、歯科医院と二人三脚で歯周病の管理ができると安心です。
むし歯も歯周病も、予防だけではなく予測できる時代になってきています。
出産後もずっと歯を失わず、美味しいものを食べながら健康に生活できる人は、確実に増えています。

Q6.歯周病があっても無事出産できますか?

A6.もちろんできますが、妊婦が“重度”の歯周病になっている場合、早産や低体重児出産のリスクが高くなると言われています。

 WHOでは、妊娠37週未満での出産を早産、新生児体重2,500g未満での出産を低体重児出産と定義しています。

日本歯周病学会は、【歯周病は早産・低体重児出産を増加させるか?】という質問に対し、〈歯周病に罹患した妊婦では、早産、低体重児出産、早産および低体重児出産へのリスクは増加する〉と回答しています。

一方、【歯周治療を早産・低体重児出産の予防を目的として行うべきか?】には、〈推奨しない〉としています。
どうしたら良いでしょうか。

 出産前に歯周病があるかどうかは、かかりつけ歯科医院での妊婦歯科健診で調べられます。
また、歯科医院によっては「唾液検査」を行い、むし歯や歯周病のリスク判定をしているところもあります。
もし歯周病にかかっていたり、歯周病のリスクが高い場合は、安定期以降の体調の良いときに、歯周病治療を受けることをおすすめします。
このときの歯周病治療は、早産や低体重児出産を予防する目的ではなく、出産後に少しでも健康に、快適に生活できるようにするためのものなのです。

いかがでしたでしょうか?この連載もいよいよ最終回です。次回は、出産前の美容と健康は「唾液力」を鍛えて手に入れよう!マイナス1歳からのむし歯予防
です。
(初回の連載記事 キシリトールで始める マイナス1歳からのむし歯予防

〈参考文献〉
・「歯周病と全身の健康」特定非営利活動法人 日本歯周病学会 編https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_body.pdf P28

・築山鉄平/宮本貴成 「GPとDHのためのペリオドントロジー」 クインテッセンス出版株式会社 2018年

ライター:せり(芹田枝里)
二児(小学生兄妹)の母。神奈川県在住の歯科医師。

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