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水中分娩のメリットと注意点は?エビデンスと出産レポから考える水中分娩

 芸能人や、女性誌のモデルさんの水中分娩が話題です。とはいえ日本ではまだ一般的ではなく、水中分娩に対応している産院は少なく、なかなか選択肢には挙がりづらいかもしれません。
今回は、現時点(2021年11月)の最新エビデンスをもとに、水中分娩のメリットと選ぶ際の注意点を考えていきたいと思います。水中分娩の出産レポと併せて、出産方法を選ぶときのヒントにしていただけたら嬉しいです。

 分娩の種類は、「経膣分娩」と「帝王切開」の2つがあります。水中分娩は、和痛・無痛・ソフロロジー分娩と同じ経膣分娩のひとつで、約37度の温水の中で出産する方法をいいます。
エビデンスレベルの高い研究を掲載しているCochran(コクラン)レビュー「分娩進行中や分娩時に水に浸かること」(※1)には、陣痛開始〜子宮口全開大までの間に水中にいると、硬膜外麻酔の使用を減らせると書かれています。
一方、会陰切開をするかどうかや重篤な後遺症の有無などは、水中分娩と他の分娩の間に有意な差はなく、今後も様々な条件での研究が必要だそうです。

水中分娩のメリットは?

 2014年(2016年改訂 2021年再確認)に米国産科婦人科学会が発表した勧告(※2)によると、水中分娩の対象は、妊娠37週~41週終わりまでの間に合併症のない健康な妊婦さんです。
また水中分娩のメリットは、分娩の短縮と、脊椎および硬膜外に使用する麻酔薬を減らせることで、子宮口が全開大したら、水中ではなく陸上でお産を進めることが推奨されています。ほかにも、

  • 水中分娩を希望する妊婦は、その利点と危険性が十分に研究されていないことを知らされるべき。
  • 水中分娩の提供を計画している施設は、妊婦の選択、浴槽やプールのメンテナンスと清掃、医療従事者の感染管理、水中にいる間の母子のモニタリング、母体または胎児に緊急事態または合併症が発生した場合の妊婦の浴槽からの移動、などの厳格な手順を確立するべき。

とあります。
ママ―レ・コ―レの水中分娩レポでは、妊婦さんたちは「陣痛が和らいだ」「浮力にまかせていられるので姿勢を変えるのが楽だった」「いきみ逃しが楽だった」と感じているようです。分娩の短縮は、水中分娩の大きなメリットとして実感されています。

水中分娩を選ぶ際の注意点

 一番の注意点は「感染」です。水中分娩用のプールの水質は、生まれたばかりの赤ちゃんに直接影響します。医師や助産師が全体の流れやメリットだけを強調するのではなく、リスクや緊急時の対応も具体的に説明してくれるか、施設を見学できるかも確認したいポイントです。
信頼できる医師や助産師さんのもとで分娩できるのは、安全面以外にも、産後の母子の精神的安定に大切な要素といえます。

水中分娩の出産レポを3本ご紹介

 最後に、海外で水中分娩をされたご家族の出産レポをご紹介します。水中分娩の出産レポは非常に少なく、とても貴重です。ぜひこの機会に、リアルなママの声を読んでみませんか?

①2013年4月、オーストラリア・シドニーで第二子を水中出産した、トリコさんの出産レポです。水中分娩は「陣痛がかなり和らいだし、足を浮力にまかせて楽にしてられた事がすんごい楽だった」と書いていらっしゃいます。
【水中分娩】海外で水中出産。38w4d〜38w5dの記録

②2016年3月、スコットランドで第二子を水中出産した、ayumiさんの出産レポです。「水中だからなのか、このいきみのがしは一人目の時よりもつらくなかった気がします」と書かれています。水中では陣痛が弱まってしまうことがあるそうですが、どのように乗り切られたのか、ぜひご覧ください。
【水中分娩】海外での水中出産レポート
【水中分娩】海外での水中出産レポート・続編

③2021年8月のエストニア。コロナ禍で制限が多い中、水中分娩を支えるパパ・たろうさんの気持ちを綴った出産レポです。
【水中分娩】コロナ禍のエストニア。水中出産で生まれる三女とママを支える、パパの気持ち

〈参考記事〉

(※1)https://www.cochrane.org/ja/CD000111/PREG_fen-mian-jin-xing-zhong-yafen-mian-shi-nishui-nijin-karukoto

(※2)The American College of Obstetricians and Gynecologists: Immersion in water during labor and delivery. Committee Opinion No. 679. Obstet Gynecol 2016;128:e231–6.

マイナビ子育て【医師監修】水中出産のメリット・リスクは?選べる条件と注意点 https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/7449

執筆・編集 芹田枝里(二児の母。神奈川県在住の歯科医師)

ママーレコーレ編集部

ママのあれこれを皆でシェアしたい」という想いに共感して集まった、あれこれ肩書きを持った人たち。