【特集】出産育児一時金と出産手当金 どう違う?いくらもらえる?

 「出産・育児にはお金がかかると聞くけれど、実際どれくらいかかるの?」
「産休(※1)中には収入が減ってしまう。出産後、安心して育児できるかしら?」
出産予定日が近づくにつれて、赤ちゃんに会える喜びと同時に、不安な気持ちも出てくるかもしれません。

表1より、令和元年の出産費用(室料差額等含む)全国平均は、約52万4200円でした。
出産費用、産休中の収入減を個人でまかなうのは難しく、そのための給付として、公的医療保険(※2)から「出産育児一時金(家族出産育児一時金 ※3)」や「出産手当金」が支給されます。「出産手当金」は、国民健康保険の被保険者には支給されないので注意が必要です。

厚生労働省や各健康保険のホームページなどにも詳しく載っていますが、マーマレ・コーレでは、「もう少しわかりやすく、気軽に読める記事があったらいいな」と思い、両者の違いと申請方法、実際に給付される金額についてまとめてみました。

《表1 出産費用の状況》

厚生労働省令和2年12月2日 第136回社会保障審議会医療保険部会資料1-2 出産育児一時金について[PDF形式:684KB] より

(※1)産前産後休業。パート・アルバイトも含め、すべての女性が取得可能。産前休業は、原則出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から請求できる。産後休業は、出産の翌日から8週間。ただし産後6週間を過ぎたあと、本人が請求し、医師が認めた場合は就業できる。厚生労働省「あなたも取れる!産休&育休」
(※2)市町村国民健康保険、全国健康保険協会、組合健康保険、共済組合など。勤務先や働き方によって、加入している健康保険の種類は異なる。我が国の医療保険について |厚生労働省
(※3)被扶養者である家族が出産したときに支給される。

「出産育児一時金(家族出産育児一時金)」と「出産手当金」とは?

 どちらも「出産」に関する給付金なのは分かりましたが、どう違うのでしょうか。表2で比較してみます。両者の違いは、「目的」「対象者」「金額」「請求方法」でした。
ここからは、「出産育児一時金(家族出産育児一時金)」と「出産手当金」について、順番に詳しくお伝えしていきます。

《表2 出産に関する給付金の種類と比較》


出産育児一時金家族出産育児一時金)出産手当金
給付目的出産費用の負担軽減出産のため会社を休む間の所得補償
対象者被保険者(または被保険者の扶養に入っている家族)出産のために休業する被保険者(国民健康保険は対象外)
給付金額妊娠4ヶ月(85日)以降に分娩した時、一児につき42万円(産科医療補償制度(※4)に加入していない医療機関等での出産は40万4000円)産休前の給与のおよそ3分の2
申請方法【直接払い制度】産院に所定の合意書を提出
【受取代理制度】→加入している公的医療保険へ所定の様式を提出
出産後に加入している公的医療保険に申請することも可能。
加入している公的医療保険に申請する必要があるが、多くの場合は会社が申請してくれる。

(※4)出産時、なんらかの理由で重度脳性麻痺となった赤ちゃんと家族のための補償制度。
「公益社団法人日本医療機能評価機構」産科医療補償制度医療補償制度|制度について
(※5)後述する「直接支払制度」「受取代理制度」どちらで受給するかにより、申請の有無が変わる。

「出産育児一時金(家族出産育児一時金)」受給時の注意事項

「出産育児一時金(家族出産育児一時金)」は、出産する医療機関等(以下、産院)での出産費用と相殺されますが、それだけではまかえない場合も多いです。表1表2より、出産の平均的な自己負担額は
52万4200円−42万円(40万4000円)=10万4200円(12万200円)
出産費用が「出産育児一時金(家族出産育児一時金)」より少ない場合は差額を受け取れますが、申請方法は産院によって違うので、注意が必要です。

また、産院が「産科医療補償制度」に加入しているか否かによって支給金額が変わります。産院が決まった段階で確認できると安心です。ご自身が加入している健康保険の種類は、健康保険証に記載してあります。
疑問点などは、お住まいの自治体や、勤務先の健康保険担当者等にお尋ねください。

自然分娩以外も対象になるのをご存知でしたか?

■妊娠12週を経過している場合

早産、流産、死産、人工妊娠中絶も対象です。翌日から2年以内に申請すると支払われます。

■妊娠22週未満の場合

出産する医療機関が産科医療補償制度に加入していても、支給額は40万4000円です。

■帝王切開等高額な保険診療が必要な場合

加入している健康保険へ「限度額適用認定証」の交付申請をしておくと安心です。
「限度額適用認定証」を医療機関に提示すると、窓口負担は、所得区分に応じた自己負担限度額までで済みます。
手続をしなかった、または間に合わなかった場合、窓口で全額を支払ったあと手続きをすると、限度額を超えた分の金額が戻ってきます。

「出産育児一時金(家族出産育児一時金)」の受け取り方法は?

 「直接支払制度」と「受取代理制度」。どちらの制度を利用できるかは産院によって異なり、申請方法も違います。それぞれの概要、「手続き時期」「手続き方法」「必要書類」を比較しました。

■直接支払制度

「出産育児一時金(家族出産育児一時金)」の請求と受け取りを、妊婦などに代わって産院が行う制度です。産院へ直接支給されるため、退院時の窓口負担が減ります。

■受取代理制度(受取代理制度導入届 提出施設一覧

妊婦などが、加入している公的医療保険に「出産育児一時金(家族出産育児一時金)」の請求をし、産院が直接受け取る制度です。

■直接支払制度・受取代理制度のどちらも利用しない場合

出産費を全額自己負担し、後日加入している健康保険へ請求する必要があります。添付書類のいずれかに「産科医療補償制度加入機関」の押印があるかも、併せて確認できると安心です。

《表3 「直接支払制度」「受取代理制度」「どちらも利用しない」の比較》

直接支払制度受取代理制度どちらも利用しない
手続き時期出産前~退院前(医療機関から案内があります)出産(出産予定日まで2ヶ月以内)出産後(出産日の翌日から2年以内)
手続き方法産院で行う。 「出産育児一時金(家族出産育児一時金)」の額を超えた分のみを医療機関へ支払う。
出産費用が42万円未満だった場合のみ、差額申請が必要
加入している健康保険への連絡が必要。
「出産育児一時金(家族出産育児一時金)の額を超えた分のみを医療機関へ支払う。
出産費用が42万円未満でも、本人の手続きは不要
出産費を全額自己負担し、後日被保険者が加入する公的医療保険へ請求
必要書類①被保険者証(保険証)
②産院から渡される、出産育児一時金直接支払制度に関する合意書
①受取代理申請書
②医療機関との合意文書(直接支払制度を利用していない証明)
①加入する健康保険所定の「出産育児一時金請求書」 ②出産費用内訳明細書(領収書)の写し ③医療機関との合意文書(直接支払制度を利用していない証明)

妊娠・出産に伴い退職。受給するための条件と申請方法

 退職すると、加入する健康保険資格を喪失します。多くの場合は、配偶者の扶養に入るか、任意継続被保険者制度(※6)を利用すると思います。「出産育児一時金」は、退職して被保険者資格を喪失した後にも受給できますが、注意が必要です。

■支給条件

資格喪失日の前日(退職日)までに、継続して1年以上被保険者期間(任意継続被保険者期間を除く)があり、資格喪失日(退職日の翌日)から6ヶ月以内の出産。
資格喪失後の受給か、出産時点で加入している公的医療保険で受給するか、どちらか一方の選択となり、重複請求はできません。
また、被保険者の資格喪失後に被扶養者であった家族が出産しても、家族出産育児一時金は受給できません。

■申請方法

加入していた健康保険に、「資格喪失等証明書交付申請書」等交付の問い合わせが必要です。

(※6)一定の要件を満たす個人が任意で加入するもの。最長2年利用できる。届出・保険料の納付などの義務を加入者自らが負う。

「出産手当金」の支給期間・申請書類・給付金額は?

 「出産手当金」は、産休を取得する健康保険の被保険者本人が対象で、産休前の給与に応じて支給されます。
任意継続被保険者には支給されませんが、「資格喪失後の継続給付(※7)」に該当する場合は受け取れます。

(※7)資格を喪失する日の前日までに継続して1年以上被保険者だった場合、資格を喪失した際に受けていた出産手当金を受け取れる。

■支給期間

出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から、出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間。出産日は、「出産の日以前の期間」に含まれます。

《表3 出産手当金の支給期間》

出産で会社を休んだとき | こんな時に健保より

■申請に必要な書類

加入する健康保険の「出産手当金支給申請書」(保険証の記号番号、またはマイナンバーが必要です)

《表4 「出産手当金」申請手続きの手順》

期間手続き内容
産休前①受給対象か確認する。
②勤務先から「出産手当金支給申請書」を入手する
産休中③申請書を産院に提出し、必要事項を記載してもらう
産休明け(出産日から56日経過後)④産院から返却された申請書を、勤務先に提出
⑤申請から1〜2ヶ月後、指定口座に振り込まれる。

■支給金額

産前・産後休業の期間中、加入している公的医療保険から、1日につき およそ賃金の3分の2相当額が支給されます。
休業している間にも会社から給与が支払われ、その額が「出産手当金」よりも多い場合には支給されません。給与の日額が出産手当金の日額より少ない場合は、「出産手当金」と給与の差額が支給されます。詳しい内容や疑問は、勤務先の健康保険担当者等にご確認ください。

出産・育児に関係する給付金の概算ツール

 最後に、「出産育児一時金」や「出産手当金」、育児休業中の給付金等を概算できるサイトをご紹介します。
申請をする前に気軽に計算できると、より安心して出産に臨めるのではないでしょうか。
産前・産後休業、育児休業の自動計算詳細事項入力・計算│女性にやさしい職場づくりナビ (妊娠・出産をサポートする 女性に優しい職場づくりナビ より)

マーマレ・コーレでは「読む出産」をコンセプトに、妊婦さんとご家族一人ひとりに寄り添い、安心して出産を迎えられるような記事を公開しています。
ママーレ・コーレ|出産レポートキュレーションサイト

【参考】
「出産育児一時金(家族出産育児一時金)」
「厚生労働省 健康・医療」出産育児一時金の支給額・支払方法について
全国健康保険協会HPより育児一時金について | よくあるご質問

「出産手当金」
厚生労働省都道府県パンフレット「働きながらお母さんになるあなたへ」
全国健康保険協会「出産で会社を休んだとき」
出産手当金|短期給付(健康保険)|私学共済事業(共済業務)|私学事

ライター:芹田枝里
小学生長男のホームスクールをきっかけに、ライティングを始めました。
主に、発達障害✕ホームスクール、発達障害✕不登校に関する記事やnoteを書いています。
本業は歯科医師(博士)

記事監修:社会保険労務士 下重郁美
MAKE UP社労士オフィス 埼玉県川口市
人事・労務にまつわるお悩み相談に対応をしています。
社会保険・労働保険の手続き、就業規則の作成などを行います。
両立支援、女性活躍、美容サロンの労務管理を得意としています。

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