【海外で出産】ドイツで第二子を出産・続編
31.Juli.2017
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産院
7:35
分娩室入り口でMutterpass 母子手帳を助産婦さんに渡して、
そのまま入院用かばんを一時的に置くロッカーのある所へ案内され、
子宮口をチェックしてもらう。
「はい、8-9cm開いてるわよ」
と返ってきて、ぎょっとする。え、開いてるの?このまま出産なの?
ちょっと待て、今からだとぱぱ氏到着は30分以上後だぞ。
「ええっと、夫が立会いを望んでいるんだけど」
「ここに着くまであとどのくらいかかりそうなの?」
「30分は確実にかかります」
「旦那さんに、速やかにこちらへ向かうように連絡するといいわ」
「いや、でももうこの状況だと間に合いませんよね、これ」
「大丈夫!絶対に間に合うわ。賭けましょうか?」
とウインクと冗談でしめて、動きやすい服装に着替えておいてね~、
と去っていく助産婦さん。
前回、あっちゅう間に子宮口開いた気がするなー、
とため息をつきつつ、
また迎えに来た助産婦さんに連れられて、分娩室へ。
7:45
入った分娩室の、5年前の記憶とのギャップにびっくりする。
5年前は、暗闇にひとつだけオレンジ色のランプが付いた
とってもムーディーなお部屋だったのに、今回は朝日降り注ぐ、
大変清潔感のある爽やかな部屋だった。
ってそりゃそうだよね、5年前は夜中の出産だったし、
この産院には3つの分娩室があるんだから。
…というどうでもいいことを助産婦さんと話し、
その間にお腹にCTGの機械をつけてもらう。
今回初めて、無線のCTGをつけてもらった。
これにより、妊婦が動き回っていても数値を測定できるらしい。
分娩室にて、分娩台(ただのベッド)に乗ろうか迷うも、
その間に陣痛が来たので
ベッドの横に立って両手を付き、その体勢のままやりすごす。
そこで、ベッドの上にぶら下がっていた青いザイルを発見して、
おろしてもらう。
これで安心。しがみ付くものができた。
そういえばこのザイル、赤ちゃんの抱っこ布(ちなみにDidymosの)
を3つ繋げてあった。
確かにこれ、柔軟な布だもんな。
出産時に苦しみながら引っ張るにはぴったりだわ。
陣痛と陣痛の間は全く痛くない。
余裕で助産婦さんと冗談を飛ばすことができるし、
ぱぱ氏と「今どこか、何時に産院につくか、今どのような状況か」
という連絡をラインでする余裕もある。
陣痛が来たらザイルをしごき下ろしながら息を吐きつつ、
ベッド横にしゃがんで行く。
陣痛が止まったらすくっと立って、ベッドに置いた携帯電話で業務連絡。
(分娩室で、しかも無線のCTGを使っているのに
携帯電話の使用を見逃してくれた助産婦さんに感謝。
多分あまり好ましくはなかったはずだ。)
しかしながら、もう、股の間が結構じわじわ痛い。
気を抜いたら何か出そう。(子どもです。)
痛くない時間がだんだん減ってきて、痛みを逃す時に「ぐ…」と声が出る。
そこでぱぱ氏より連絡:「8時7分着予定」。
あと15分。
無理です。我慢できません。
絶対無理。もう無理。待てない。出る。
とぶつぶつ言う私に、大丈夫、
絶っっっ対に赤ちゃんは待ってくれるから、大丈夫よ!と
またも確信を持って力強く言ってくれる助産婦さん。
もう一度携帯電話確認、「電車遅れてる」との追加メッセージを読んで、
気が遠くなりそうになる。
8時5分
陣痛が来ると同時にベッド脇にしゃがんだまま、もう立ち上がれなくなる。
直ぐに助産婦さんが2cmくらいの厚みのある
ゴムマットを持って来てくれて、ベッド脇に敷いてくれる。
下着を脱がせてもらって、たくさんの防水シートを敷いた
マットの上にひざをつき、
青いザイルにしがみ付いて、泣きそうな獣のような声をあげる。
助産婦さんが、
「今手術室に先生(産婦人科医)いる?
すぐに分娩室に来るように言って」と電話をかけている。
じきに、インターンの女医さんが現れ、私の目の前にあった椅子に座り、
床にひざをついて苦しみに喚いている私の両手をぎゅっと握る、
という役をしてくれる。
いきみたい、いやまだ待たねば、という心と身体の葛藤と闘う。
8時10分過ぎ
誰かが分娩室の受付に入る呼び鈴を鳴らしたのが聞こえた。
「ほら、きっと旦那さんよ!来たわよ!」とすかさず言う
助産婦さんと、それを承認するように、ぎゅっと
手を強く握り返してくれるインターン女医さん。
よく分からない叫び声を出しながらも理解し、
お、もう出していいのか、と気が楽になる。
という訳で、いきみ始めた。
「分娩室にいる人さあ、りりさんて名前ー?」
というのんびりした受付の人の質問に、
「そうよっ!入れていいわよー!」と気合の入った返答をする助産婦さん。
この温度差。
分娩室入り口に尻を向ける形でひざ立ちになっていたのだが、
肩越しにぱぱ氏が入ってくるのを確認。
(もうこの間ずっと動物のように叫んでいる私。)
「女医さんと交代して椅子に座って、奥さんの手握りなさい!
りりさんは旦那さんの手と足にしがみ付いて頑張んなさい!」
との指示にあわあわと座り、
私が上半身を埋められるように膝を提供してくれるぱぱ氏。
そんな彼の手を容赦なくつぶす勢いで握って、叫んで、踏ん張るりり。
うつ伏せだし、ぱぱ氏の太ももに顔を埋めているので
助産婦さんと女医さんの視線も見えず、
何が起こっているか分からないので、叫びながらも、
取り敢えず身体の感覚に集中して
出産に集中しよう、と考える。(…いや、もう声は止められないもんだ。出産だもんな。)
出口を赤ちゃんの頭が押す。一旦奥に引っ込む。また押す。
それに従って出口も開いたり閉まったり。
ある程度の所でもう我慢できなくなって、ぐっと押す。
すると突然、長い間溜め込んだお通じ(失礼します)がやっと出た!
というようなスッキリ・充実感に満たされる。ここで頭が出た。
この時点で、私の仕事が終わったような気すらする。リラックス。
「ネズミちゃん!さあ、回るのよ、ネズミちゃん!回ってー!」
と助産婦さん、(多分)頭だけ出している赤ちゃんに呼びかける。
お腹の中で、赤ちゃんの身体がぐにゅんと90°回った。
で、ずるずるーっと引き出される(もしくは滑り落ちる?)感覚と、
ほぎゃっほぎゃっというのが聞こえた。
肩越しに眺めると、紫色がかった、濡れた赤ん坊がいた。
ママーレコーレ編集部
ママのあれこれを皆でシェアしたい」という想いに共感して集まった、あれこれ肩書きを持った人たち。