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【海外で出産】ドイツ出産記#2 いざ出産

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23:00
何かが膣から漏れ出したので、履いていたパジャマズボンを脱ぐ。
量とタイミングからから推し量るに これは高位破水で、これから陣痛が酷くなると考える。
助産婦を呼ぼうか呼ぶまいか迷うが、別にいいや、と呼ばないことにする。

23:20
陣痛の痛みが、理性によるコントロールが不能な域へと及び始める。
陣痛がくると同時に、さっき脱いだパジャマズボンを思いっきり両手で絞りあげないと、堪えられない。
目をぎらぎらさせ深呼吸をしつつ、力いっぱいズボンを絞る。
(目を閉じると痛みに集中しちゃうからよくないらしい。)

さすがにこの辺でナースコール。

23:30すぎ
助産婦さん登場。
さっき一人産まれたことやら、
これから私が分娩室に運ばれることを一通り聞いてから

「さっきなんか漏れました」
「破水したのよ」
「もういきみたいんですけど」
「ちょっと待って。今は子宮口が…9cmと少し開いたね」
「え、じゃああと1時間くらいで産まれますか」
「今いきめば今日中に産まれるよ。おしっこしたい?」
「したくないですけど一応トイレには行きたいです」
「うんこはだめよ、それは子供よ」

見透かされたように言われ、もううんこと子供同時に産んでやる、
と腹を決めつつも
未だに現実を把握できず、半ば呆然としたまま、分娩室へ運ばれる。
会話の途中で私の声色がいきんだらしく、いきみたい時は
「ハッハッ」と胸呼吸をしていきみ逃しをするように言われる。
もう、助産婦さんの言うことをそのまま繰り返すしかできない。
思考能力停止中。

分娩室
ああ分娩室。
トイレに入って便器を見た途端に全力でおしっこがしたくなるように、
分娩室の「さあ産みたまえ」という万全の設備を見た途端、
もう全力で出したくなった。

このあたりではもう産みたい衝動に体を乗っ取られ、
自己コントロールが利かない。
痛みは感じない。とにかく出したいのだ。
もれるー、という生理的な焦りだ。

なんとかよじ登った分娩台の上で、
天井からぶら下がるザイルをつかませてもらい、
「なんで私の手はこんなにがくがく震えてるんですか」
「っていうか風が冷たいから窓閉めてください」
「あと30分で産めるんですか」
と熱に浮かされたようにべらべら喋る私に、いちいちマメに答えてくれる
助産婦さん。

そのうち、股間から水分が勢い良く噴出した。
助産婦さんが本格的に破水させたらしい。
次陣痛がきたらこういきむのよ、と
毎度具体的に言って示してくれる彼女のお陰で、
少し冷静になる。が
途中で「今いきまないで!会陰を伸ばして慣らさないと裂けるよ」
と言われるものの、
ええいだまれどうでもいいわ!と思い、いきむ。
すると下半身が急にカーッと熱くなった。きっと今裂けた。

自分がうわあああと叫んでいるのに気付く。
「頭が出てきたから触る?」と聞かれるも、
産んだ後にします!と即答。
裂けた所に触ってしまったりしたら、冷静になって怖気づき、
産む気をなくしそうだったからだ。

23:45
「産まれたよ、男の子だよ」と声をかけられたので、
我に返って自分の股間を覗き込むと、いたのが息子氏。
おお、すげー!お前が赤か!!お前だったのか! 
というのが最初の感想。
私が誰だかわかるか聞いてみたら、息子氏は少し
うあー とか言っていた気がする。

(顔を見、私にも赤父にも似てなくね?
あれ、私誰の子産んだんだ?という感想も持った。
なんでだろう(・∀・)顔がむくんでいたからだろうか。
とはいえ、もちろん素敵な人間に変わりはない。)

とにかく、お腹から人が出てくるという現象が
不思議に思えてたまらなかった。
感動とかよりも驚きの方が大きく
「うわ、目開いた」「動いた」「息してる」だの
助産婦さんが思わず笑うようなことを、
思いつくままに言った。

ほらまだ脈打ってるでしょ、とへその緒を握らせてもらう。
あったかくて、けっこう分厚い。
胎児が外に出た後も、へその緒は2分ほど脈打ち続けるらしい。
脈打ち終わったそれを、がっつり切らせていただく。
ゴムホースを切っているような感触がする。

それから服を脱いで、抱っこ。
息子氏には血がついていたけれども汚い感じがしないし、
何だか懐かしいようないい匂いがする。
ふご、ふごっと腹の上を彷徨っていた息子氏だが、
助産婦さんが私の乳を搾ると、
ふんふんと鼻息を鳴らしながら吸い始めた。

意外と強い吸引力に、こちらは目を白黒させるばかり。
母乳は羊水と同じ匂いがするので、
赤ちゃんはすぐに母乳にとびつくんだそうだ。

そのまま分娩室で、息子と二人きりのプライベートな時間をもらい、その後
抱っこしたまま女医さんに裂傷を縫ってもらう。
この麻酔をうたれる時が一番痛かった。
ひいっとわめくと、
「ほらー赤ちゃんが今びびったでしょ、あやまんなさい」
と助産婦さんに諌められてしまった。

女医さんはとても沈痛な面持で、
2件の帝王切開が入ったとはいえ、
私の出産に立ち会わなかったことを心から詫びてくれた。
謝るドイツ人なんていたのか。
が、そもそも何が出産スタンダードか知らない私が
いやもう全然問題なかったんで…と慰めるも、
いやいや、申し訳ないです…(´・ω・`) 
とこちらが恐縮したくなる勢いで謝ってくれる。

出産には、そういうわけで助産婦さんのみが
立ち会ってくれたということだ。
彼女の言うことだけに集中できたので、
彼女一人だけでよかったと思う。

息子の計測の時。
「52cmと3150gだね。長くてスリムねー。いいわね」
「え そんなに長いんですか!?私アジア人なのに?」
「胎盤が大きかったからね。食生活にも関係してると思うよ」
「きっとスニッカーズだ」
「スニッカーズは長いでしょ?ほらね!」
という会話があった。
ちなみに産まれた時の身長が大きいからといって、
大きく育つわけではないようだ。

それと、胎盤を持ち帰るかどうかも聞かれた。
半分冗談ぽいニュアンスでね。
胎盤を幼い木の下に埋めて、
木と共に子が育つよう願うというやり方があるそうなので。
残念ながらうちには庭がないんです、と丁重にお断りした。

*

会陰裂傷にまつわる痛い話。
出産を終えた方、妊婦でない方、
あまり気にならない方は反転でどうぞ。


会陰というか膣、どうも前後に裂けたらしい。
(何針縫った、とかは聞いていない。相当長い時間縫っていたので怖くて聞けない…)
というのも、息子氏がこぶしを耳の横に当てたまま出てきたらしく、
会陰マッサージをしていたとはいえ、どのみち裂けなければいけなかったようだ。
こういうこともあるようです。

一旦この辺で切ります。続きはまた後日に…。

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ママーレコーレ編集部

ママのあれこれを皆でシェアしたい」という想いに共感して集まった、あれこれ肩書きを持った人たち。